シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
もしや…
榊だということを知らないのか?
知らないのは…榊という人物?
それとも、仮面の下の素顔?
しかし榊は…久涅を知っているようだった。
榊は氷皇の腹心。
氷皇と久涅に面識があるのだとすれば、榊と久涅だって顔合わせしている可能性はあり、全く知らない仲だと言い切れないはずで。
だが――
「お前は…誰だ?
何でそんな格好をしている?」
久涅から放たれたのは、警戒に満ちた声だった。
確かに榊は変わり果てた。
確かに俺も久遠も戸惑った。
しかし――
「それは…誰の命令だ?」
久涅の注意は、"黄色い外套男"という存在に向けられている気がした。
軽い…驚嘆が声に混ざっているのを感じた。
久涅はきっと、遠坂榊という人物が黄色い外套男だということを知らない。
此処まで痛ましい姿になっていることも知らない。
そして多分…
此の場に外套男がいるはずがないという確固たる根拠がある。
外套男の出現の意味を確りと判っている。
俺はそう思った。
何故久涅がそう思えるのか。
そして何故榊が此の場に居るのか。
俺は2人の考えが判らない。
久涅が榊に向けていたのは――
「誰だかは知らないが…
お前もまた"模倣"者か」
哀れんだような視線。
「だが…此の地の主役はお前ではない」
それは嘲笑するが如く。
「そして俺でもない」
そう言った。