シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
――――――――――――――――――――――――――――……
「れ、玲くん…あの…ね、庶民には庶民に相応しいお洋服のお店があると思うのね、あたし…だから…」
「駄目。逃がさないよ?」
僕は逃走寸前の芹霞の手を掴んで、その"ブティック"に入る。
僕は知っているんだ。
芹霞がよく雑誌で、溜息をつきながらうっとりとしてみているお店の存在。
東京銀座の一角。
新しくオープンしたばかりの高級ブランド。
若い女性をターゲットにしたという、可憐な服が多く見受けられる。
「何だ、そんなに高いものじゃないんだね」
僕は、目に付いた服の値札を見て言うと、
「れ、玲くんそのワンピ…19万じゃないの!!!」
芹霞の目がこれ以上ないという程、大きく見開いた。
高いのかなあ、これ。
僕が好きな…可憐なピンクの花柄で、ひらひらの感じがとても可愛いから、それくらいしても妥当な線なんじゃない?
そう言えば、同意してくれたのは店員さんだけで。
「れ、玲くん…!!! 大根1本50円の特売時に、朝早くから並んで買いに行く人の台詞じゃないよ!!? 御醤油10円安いからって、3駅も遠くにあるスーパーに歩いて買いに行く人の台詞じゃないよ!!?」
「せ、芹霞、そんな大きな声で!!!」
さすがに僕の顔は羞恥に赤く染まった。
「"彼女"さんのお買い物には、きっとこちらの品物はお安いものなのでしょうね。とても可愛らしい方ですから、きっとお似合いになると思いますわ」
店長と名乗る優雅な女性が出てきて、にっこりと笑う。
「か、"彼女"!!! あたしが、玲くんの!!!」
芹霞が大げさに思うくらいに、仰け反った。
少し機嫌を損ねた僕は、そんな芹霞の腰に手を回し…
「ふふふ、お褒め下さりありがとうございます」
否定しない。
するもんか。