シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「久遠様が、ニトリクスの鏡には対になるものがあると聞いてられたようだ。私はそれを見たことがないが…芹霞はあるらしい」
「師匠、それが…小猿くんの鏡なのかな」
多分、そうなのだろう。
五皇の所有物の対になるものが、皇城にあったのは意味があるのか?
皇城は…五皇が従う元老院の力が及ばぬ、別個の勢力集団。
言わば、相容れぬ2つの勢力。
それが交差する部分があるのは何故なのか。
そして芹霞が皇城翠の持つ鏡を"見れた"というのなら、皇城翠も蓮の鏡を使うことが出来るのだろうか。
『緊急警報。
電力が不足している為、間もなくこのシステムは停止します』
「師匠!!! 緊急システムが止れば、予備電力の供給も成されず、完全に電力停止してしまうぞ!!? 出入り口も開かれ、そこから何が入ってくるかも判らない。イイコトなんてなにもない!!!」
僕は――。
「1つだけ策はある」
「え?」
「電力の供給」
由香ちゃんと蓮が僕を見る。
「万が一の為に、準備はしていた」
僕は、芹霞がくれたバングルに口付ける。
「それ…月長石? あれ、師匠の月長石じゃないよね」
「置いてきたんだ。
――電脳世界に」
「へ?」
「ゆんゆんは怖かったけど…電脳世界を体感してきたからね、僕。虚数まみれた世界を目にして、何も手を打たない僕じゃない」
僕は笑う。
「バングルの月長石を通して…電脳世界の月長石を動かす。出来るか判らないけれど、やる。やってみせる!!!」
もしもの為の布石だった。
本当は電脳世界が虚数に塗れた時の対策に、人間界の電力を…僕のバングルの石を通して0と1を供給する予定だった。
いや、東京の0と1を少しずつ…送ってはいたんだ。
しかし現実は逆転する。
0と1が必要なのは…人間界。
電脳世界が危篤に向かっているのは十分承知しているけれど、だけど今、緊急的に電気が必要なのは僕達なんだ。
僕の独壇場で、電気のせいで皆を危険には陥らせない。
僕は――
「由香ちゃん、補佐(サポート)頼むよ。電気が回復してきたら…」
「判ってるよ!! 予備電力を全解放させる」
「そして僕が一気に対策プログラムを作る」
意識を集中させた。