シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

「な、何で!!? 緊急システムの作動時の走査(スキャン)では異常なかったし、何より水力発電で生じた生の純粋な電力だぞ!!? 何処で虚数なんか混じったっていうんだよ!!!?」


カタカタカタ…。


僕はキーボードを叩いた。


「……由香ちゃん、見ろよ、これ」


僕は顎で画面を促した。


「最初は予備電力は通常通り0と1構成だった。だけど少し前から、外部から…何か投入された痕跡がある。

例えば、ウイルスのような…」


「は!!!?」


「時間は6時45分前後。場所は不明だけど…遠隔操作により、予備電力のシステムをハッキングして、セキュリティホールに侵入し、力でこじ開け…虚数に変換するウイルスを放った奴がいる」


「誰だよ、それは!!!

師匠のセキュリティーをハック出来る強者なんて、何奴だよ!!!

頼みの予備電力に何てことしてくれたんだよ!!!」


ダンダン、ダンダンッッ!!!


由香ちゃんは激しい地団太を踏んだ。


「どうする、紫堂玲」


蓮の金色の瞳が僕を向く。


「………。ウイルスにはウイルスを」


僕は、不適に笑った。


面白いじゃないか。

何処の誰だか判らないけれど、僕の構築したシステムに、ウイルスなんてもので覆そうとするなんて。


僕の独壇場で、喧嘩を売る気なら。

買ってやるよ、僕は!!!


ただでは転ばない。


「虚数というものが"たかが"プログラムで猛威をふるえるというのなら、そのプログラムを反転させて、捕食対象と被食対象を書き換え、-1を食らう0と1の増殖プログラムを作る。

ウイルスに…逆に寄生して、現在の"食物連鎖"を逆転させる」


「逆転!!?」


「上手くいけば――

"約束の地(カナン)"に蔓延する虚数も減じることが出来る」



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