シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「ふうっ。何とか…間に合ったみたいだ。大して解放されていなかったのが助かった」
「よきゃった!!!!」
もう由香ちゃんは動揺しすぎてカミカミだ。
「どういうことだ、紫堂玲」
蓮が怪訝な顔をして問うてくる。
「…0と1の…電気の力から、メッセージを受け取った。"擬態"だから、予備電力を解放するなと」
「擬態…? そもそも電気の力にメッセージなんてあるのか?」
「電気に意思がないって? だけど…意思があったじゃないか、今までの"約束の地(カナン)"には…」
レグが開発して、突然変異して意思を持つに至った人工知能。
「もしかして…その残骸はまだ電脳世界にあるのか?」
「警告を出したものの正体は判らないけれど、由香ちゃんに警告を出したのもあると考えれば…何かの何らかの意思があると考えた方がいい。
単数か複数かは判らないけどね。
僕は電脳世界に行った身、もう何が起きても不思議じゃないけれど…電脳世界に意思を持つものが居るにしても居ないにしても、メッセージとして僕が感じたことが重要だ。
僕は…そのメッセージを信じる」
電脳世界の0と1は僕の敵ではない。
僕の味方だ。
防御壁で囲った予備電力。
それをゆっくりと精査した僕は、顔を歪めた。
「これが…予備電力…?」
そして僕は、バングルからの力を利用して、由香ちゃんに代わってキーボードを叩いてメインの機械を動かした。
予備電力に関するプログラムが表示される。
「師匠…」
由香ちゃんが画面を指差して声を上げた。
「プログラムに…"-1"が!!!!」
0と1のランダムな羅列に、所々混じる-1。
見ている間にも、-1の数が増え、0と1が無くなっていく。
「虚数…だね。
予備電力は…いつの間にか、虚数になってたんだ。
だからもしもの場合の緊急システムで切り替えた予備電力は、通常電量を食らうものとして広がり、益々通常電力の消費を大きくさせたんだ」