シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
 

「ふうっ。何とか…間に合ったみたいだ。大して解放されていなかったのが助かった」

「よきゃった!!!!」


もう由香ちゃんは動揺しすぎてカミカミだ。


「どういうことだ、紫堂玲」


蓮が怪訝な顔をして問うてくる。


「…0と1の…電気の力から、メッセージを受け取った。"擬態"だから、予備電力を解放するなと」


「擬態…? そもそも電気の力にメッセージなんてあるのか?」


「電気に意思がないって? だけど…意思があったじゃないか、今までの"約束の地(カナン)"には…」


レグが開発して、突然変異して意思を持つに至った人工知能。


「もしかして…その残骸はまだ電脳世界にあるのか?」


「警告を出したものの正体は判らないけれど、由香ちゃんに警告を出したのもあると考えれば…何かの何らかの意思があると考えた方がいい。

単数か複数かは判らないけどね。

僕は電脳世界に行った身、もう何が起きても不思議じゃないけれど…電脳世界に意思を持つものが居るにしても居ないにしても、メッセージとして僕が感じたことが重要だ。

僕は…そのメッセージを信じる」


電脳世界の0と1は僕の敵ではない。

僕の味方だ。


防御壁で囲った予備電力。

それをゆっくりと精査した僕は、顔を歪めた。


「これが…予備電力…?」


そして僕は、バングルからの力を利用して、由香ちゃんに代わってキーボードを叩いてメインの機械を動かした。


予備電力に関するプログラムが表示される。


「師匠…」


由香ちゃんが画面を指差して声を上げた。


「プログラムに…"-1"が!!!!」


0と1のランダムな羅列に、所々混じる-1。

見ている間にも、-1の数が増え、0と1が無くなっていく。


「虚数…だね。

予備電力は…いつの間にか、虚数になってたんだ。

だからもしもの場合の緊急システムで切り替えた予備電力は、通常電量を食らうものとして広がり、益々通常電力の消費を大きくさせたんだ」


< 1,053 / 1,495 >

この作品をシェア

pagetop