シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
 
何の破談が朱貴は聞かない。

どんな状況に陥っているのか聞いてこない。


だけど判っている。

その為に、私達が朱貴を利用しようとしたこと。

その為に、七瀬紫茉の救助に協力したこと。


そして私が揺らいでいること。


朱貴と七瀬紫茉を引き渡せば、彼らの待つ未来は喜ばしいものではない。


周涅の憤った処から思えば、七瀬紫茉を介在する…あの汚らわしい儀式めいた意味不明なものは、再び行われないのかもしれないけれど、しかし邪魔されたからといって簡単に引き下がる久涅でもないし、そして朱貴だって無事にはすまないだろう。


今後の牽制も兼ねて、必ず制裁は加えられる。


広尾の家に監禁までして朱貴を遠ざけて邪魔されたのだから、それ以上のことを朱貴にしでかすだろう。


そんな2人を、例え皇城家直系の次男とて、翠がなんとか出来るものではない。周涅は…皇城家№1の代理なのだ。


私達は――

朱貴と七瀬紫茉を差し出せば…運がよければ命がある内に此処から抜け出し、運がよければ…玲様の笑顔を見られる。

玲様との約束を違えずにいられる。

ひと時気まずい思いをしても、もうかかわらねばいいだけの話。

私は皇城家に仕えているのではない。


私にとっての益は、玲様をお救いすること。

私達が置かれている困窮を打開すること。


――取り下げてやってもいい。


例え確固たる保証がなくても、可能性を0から少しでも引き上げれば…チャンスは生まれる。


チャンスを掴むのが、私達の務めだ。


それは判っている。


観念したように…

目を瞑ったままの朱貴。



あんなに…

あんなになってまで七瀬紫茉を助けようとした朱貴が。


あそこまで必死になって七瀬紫茉を救おうとした朱貴が。



私を詰るでも懇願でもなく――

諦めるというのか?


それは諦め慣れていた…かつての玲様を彷彿させた。


これから自分の辿る過酷な運命を悟りながら、全てを諦めるというのか?


私が…揺らいだ末に、周涅に引き渡すと思っているのか?


私は――


「ふざけるな…朱貴」



――人の心を捨てるな。


そこまで弱くて非情ではない!!


揺らいだのは――

もしもの話。


もしも簡単にコトが運んだらの話。


簡単に朱貴達を捨て、

簡単に玲様の笑顔が取り戻せれたらの話。


簡単になど、コトは進まない。


これは――

簡単なことではない!!!


私は――

夢に溺れて現実を忘れる奴じゃない!!!


「返事は――


NO!!!!」


私は叫んだ。
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