シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「残念だけれど、紫茉ちゃん」
赤銅色の瞳が、愉快そうに細められた。
「紫堂櫂は死んだよ、間違いなく。
五皇に…幻覚は効かない。
何よりあの紅皇が…見逃すはずはないし…人間というのは、そう簡単に生きていた時と同じになんて、復活なんてできないよ。ファンタジーでもあるまいし」
「周涅…」
そう忌々しげに顔を歪ませたのは翠。
「元はと言えば…お前が下手に手を出したから!!!」
そう。
この男…紫茉の兄が変な術さえ使わねば、紫堂櫂はあんなに焦らずとも、目的地につけたんだ。
それを怒りに染めて、皇城翠は何処までも険しい顔をする。
「八つ当たりだね、翠くん。無力だからって、周涅ちゃんのせいにしちゃうの、よくないよ?」
ばっさりと斬った周涅の言葉に、翠は押し黙った。
そう、それは…あまりに図星だったから
「何とか…助けてやれないのか、周涅。
皇城の力で、芹霞を…紫堂を…」
可愛い妹の懇願。
しかし――
「元々、皇城は、紫堂の一件には介入していない。
最終地点で何が行われたのか判らない。
判らないのに下手に介入すると…
周涅ちゃん達が破滅しちゃうよ?
だからどうしようもないよね」
突き放したような冷淡な言葉。
つまりは――
「だから、お前…久涅だけ残して、あの場に来なかったのかよ!!!?
何だよ、お前だって…俺と一緒に無関係ではないじゃねえかよ!!?
関わって何も知りませんって、今更無視するなんて…卑怯じゃないかよ!!!?」
なかったことにするつもりで。
「何のことかな、翠くん。
君は皇城から家出していた。
だから皇城の管轄下にいなかったから、君の行動は皇城は責任持たない。
だけど君は本家に戻ってきた」
「戻って来たって…お前が俺を此処に「同じことだよ」
赤銅色の瞳がきらりと光る。
「お帰り、翠くん。
これからは、皇城の為に…忠誠を尽して貰うよ?」
それはどこまでも不穏な空気。