シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「周涅…紫茉と朱貴を解放しろ」
気づけば…
皇城翠が立っていた。
凛とした…研ぎ澄まされた藍鉄色の瞳。
それは静かなる怒りを湛えた…
櫂様にも通じる、覇者の圧感。
彼もまた…
皇城という特殊家系の直系なんだ。
素質がある。
…世間知らずで、無自覚なだけで。
「周涅ちゃんを抑えた気でいるの?」
周涅は動じない。
噛み付かれたままの片手を上に上げ、そのまま大きく振った。
勢いで猿犬が地面に叩き付けられ…その顔を周涅は足で踏み潰した。
ひらひらと…紙に還る。
「これで…小賢しい式は使えなくなったね、翠ちゃん。どんな策があるの、教えてよ?」
時間稼ぎと煌は言ったけれど。
煌を見捨てて逃げれなかった私は、
煌の案に乗じて…
"逆転"させた。
時間稼ぎこそが、"私"の策。
煌が復活する為の。
背を向ければ周涅が即座に動く。
1人では周涅を抑えることが出来ない。
だったら――
2人で相手をすればいい。
それくらい、聖ではなくとも私だって判るんだ。
私が居るのは誰かを死なせる為ではなく、
誰もを死なせない為にある。
私が求めていた強さとは、
守るための強さ。
決して…
誰かを殺す為ではない。