シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「あの煩い鳴き声と炎は…
注意を逸らすための陽動か」
そう。
周涅の手首に噛み付いているのは、私に擦り寄ってハアハアしていた気持ち悪い犬もどき。
炎が出現した瞬間、
久涅の注意は煌から逸れて、
その後、私に移った。
骨を折り、煌の動きと戦意を消したつもりの周涅は、その慢心故に…煌を見くびった。
――俺が…時間稼ぎをする。
煌のなけなしの長所は、
執拗さ。
痛みや恐怖如き、しつこさを上回るはずがない。
彼の痛みと恐怖は…師である緋狭様とその血を連ねるだけにもたらされるものであり、だからこそ皇城家で彼は耐えられた。
その事実がありながら、まるで夢物語のように心に透過させたのは周涅だ。
そして奇妙すぎて出来れば敬遠したい猿犬もどきが、皇城翠によって作られたものであるのなら。
何より彼の気配を気づいていたのなら。
尚一層――
煌をも慕うその"心"を見くびりすぎていた。
何も出来ないと蔑みすぎていた。
だから…
ありえない事態が起こるのだ。
皇城翠の…弱すぎる式が生き残り、自分の背後で煌を治療しているなど…考えつきもしなかったのだ。
恐らくそれこそが、
聖が翠を使ってやらせたかったこと。
奇抜な外観は先入観を崩すため。
聖が求めていたのは…
我が身を犠牲にしても"心"を守れるか否か。
それが理解出来ない周涅の、裏をかく…重要な条件。
だから…
煌は助けられた。
聖はこうなる事態を、見越していたのだろう。