シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
 
「………」

「………」


「………」

「………」


「………」

「………」


「………」

「……ううっ…」



涙出てきそう。


「神崎!!!」


由香ちゃんが、あたしの双肩を掴んで叫んだ。


「何処をどう見たらそうなるのさ!!! あんな程度、君はいつもじっくり見てきただろう!!!?」


「…ぐすっ…。凜ちゃんとは初対面」


「ああそういう設定か…じゃなくて!!! ~~ッッッ!!! うぬぬぬぬぬ~ッッ!!! 何をどう言えばいいんだよ!!! なまじ…師匠から色々聞いてしまっただけに!!」


由香ちゃんの顔は悲壮感が強い。



「色々って何?」


「さ、さあね」


由香ちゃんは目を泳がせて、わざとらしい口笛を吹いた。


結婚だ。

きっと結婚のことだ。


それに凜ちゃん、関係あるんだ。


「玲くんが凛ちゃん選んだのなら…あたし、快く応援しないと…。判っているけど…何だか辛い。それに凛ちゃんは久遠が好きなんだし、久遠だって凛ちゃんのこと…」

「待て待て待て、神崎!!! 何で事態はそんなややこしくなっているんだよ!!!」


「あ、由香ちゃん知らなかったのか。今、凛ちゃんを久遠と玲くんが取り合って…」



「――…はぁっ…」


何とも面倒臭そうな溜息。



「久遠…、何とかしろよ!!! 酷いことになってるぞ!!!」


由香ちゃんの声に振り返れば、呆れ返ったような久遠が立っていて。

もう本当に哀れんだ顔をしていて。


あたしは直感した。


きっと久遠は、三角関係になっていることを悟ってる。

もしくは…今、聞いて判っちゃったのかな。


でも遅かれ早かれ、玲くんだって動くだろうし…。


久遠と凜ちゃんと玲くん。

玲くんは…片想い?

それとも…?


「久遠も色々大変だね」


辛いのは…あたしだけじゃないか。

久遠も…嫉妬したり悩んだりしているのかな。


「折角、あんなに美人の当主夫人候補見つけたのに…玲くんは手強いものね。あたし…どっち応援していいかよく判らないけれど、頑張っていこうね」


ぶちっ。


何か切れたような音がした…

そう思った時には、また久遠の肩に担がれていた。

そして問答無用で、ずんずんと屋敷の中に運ばれる。
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