シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

「"生えた"後に、俺、此処に来れてよかった…。朱貴いない時に、またあの音に脳味噌掻き混ぜられたくねえし…」


「音?」


「ああ。小猿と俺だけ、聞こえるらしい」


その小猿は、暢気にまだぐうすか寝てやがる。


「朱貴曰くあの塔は…お前が解読出来ねえ周波数を増幅するとかなんとか…。封印を解くのに、電脳世界の力が必要だとかなんとか…。

他にも何か言ってたかも知れねえけど、それは"なんとか"に集約されていると思ってくれ」


「封印とは何だ?」


そう…玲が怪訝な顔をした時だった。


女の――

強い語調の声がしたのは。




「……この声…芹霞!!!?」



玲がびくんと体を揺らした。


俺達が見つめた先は、屍達が逃げてきた方角で。


俺達は足早に、その方角に赴く。


声は大きくなる。


「芹霞だけじゃねえな。

この声…久涅も居るのか!!?」


俺の強張る体の中に、緊張感が走る。


「なあ、玲。無効化出来る久涅がいるから…屍が逃げてきたのか?」


「多分、それが正解だろうね。だから此処周辺には、蛆も蚕も蝶も居ない。


此処に居る生者は、芹霞と久涅だけじゃないね。

…掠れているけど、この声…」



「櫂だ!!!」



俺が聞き違えるものか!!!

ようやく、櫂に逢える!!!


俺は、肩の小猿を叩き起こす。


「小猿、お前の出番だ!!!

久涅対策にお前が必要になるかも知れねえから、身構えておけ!!!」


「んにゅぅ?」


…なんちゅう…緊張感ない返事だ。

< 1,322 / 1,495 >

この作品をシェア

pagetop