シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

だけど端麗の顔は、崩れることなく。

見事なまでに感情は表に出ない。


無表情の仮面をつけた玲。


仮面の下の素顔は、どんな表情をしているのだろう。

玲は何を思っているのだろう。


櫂を嫌うなよ?

今まで通りでいてくれよ?


2人の関係に皹が入らないことだけを切に願う。

願うしか俺には出来ねえ。


此処からの距離では、3人の姿がよく見えない。

声だけしか耳に届かない。


櫂…。



「お前は…随分と玲を信頼しているようだが…玲はお前を裏切った」



その言葉に――



「!!!!?」



玲の仮面に皹が入った…


気がした。



「小娘の記憶を消したのは、

――玲だ」


瞬間――。


パリーンと音がして、

今度はシャラシャラと…


玲の顔から――

割れた仮面の欠片が落ちてくる。



零れ落ちてくるのは


――硝子。



脆く壊れやすい…

綺麗な綺麗な硝子の破片。


シャラシャラシャラ…。


それは、玲の心のように繊細な…か細い音をたてて。


まるで涙のような――

いや…これは、涙の雫。


見開かれた目から…

硝子のような涙がぼたぼたと零れ落ちているんだ。


その顔は――


苦痛。

苦悶。

苦渋。


あらゆる苦痛が絡んだ、惨憺な色に覆われていて。



その痛ましさに…

俺は――

思わず息を呑んだ。


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