シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「玲は…小娘の中のお前の記憶を消し、自らをお前の存在とすり替えて、お前に代わって小娘の愛を得ようとした。
小娘がお前のことを思い出せないのは、玲によるものだ」
久涅の言葉に…
血の気が引いて、蒼白となった顔。
唇はわなわなと小刻みに震え始めて。
恐怖と苦痛は――
"絶望"に変わる。
「玲…聞くな。聞くんじゃない!!」
思わず俺は玲の耳を塞ぎにかかったけれど…
玲は藻掻くようにその手を払った。
久涅の…勝ち誇ったような声が大きく響く。
「玲は、お前の心を知りながら、
お前を裏切ったのだ!!!
玲はお前から、愛を奪った。
そして何もなかったような顔をして、
堂々と小娘の愛を得ようとしていた!!!」
俺は、久涅に激しい怒りを感じた。
何もなかったように出来る男なら、こんなに罪悪に満ちた顔をしていない。
お前に玲の何が判る!!!
櫂のことを思えばこそ、玲は今まで動けなかったんじゃないか!!!
俺が口を開きかけた時だった。
「あ……ぁっ……あ…」
玲の呼吸が激しく乱れたのは。
絶望は…慟哭へ。
行き場のない慟哭は、玲の体内を駆け巡る。
「おい、しっかりしろ!!!
過呼吸になるぞ!!?」
過呼吸で収まればまだいい。
玲は…心臓を患っているんだ。
心臓にきたら…。
「はっ…はっ…ぐ…うぐっ…!!」
きたのかよ!!!
玲の指先が、自らの心臓を鷲掴みにするかのように…胸に食い込んでいる。
「玲、しっかりしろ、玲!!?」