シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
いつもの如く不機嫌そうな声に、俺は振り向いた。
「何だよ、これ…」
気怠そうな各務の当主は、俺が投げたそれを手で掴んで…俺を睨み付ける。
「お前が欲しがっていたものだ。くれてやる」
それは――
俺の手首から外された…赤い布。
「随分と上から目線だな、紫堂櫂」
「お前と同じ、"性分"だ」
舌打ちしながら、久遠は布を手から離そうとしない。
「行くのか?」
蓮の声に…俺は頷いた。
「もうそろそろ…出ても良いだろう」
此処は――
"約束の地(カナン)"地下4層。
「きゃはははははは!!!
カイくん、司狼がずどんってしたの、ずどん!!!」
「旭~。お前だって転がったじゃないか!!!」
騒ぐのは、司狼と旭。
「だけど…よかったよ、クマがプログラムに細工してくれてたからさ~」
遠坂が、三沢…だとかいう通称"クマ"を褒め称えた。
「しかし吃驚したぞ、本当に。突然、このチビッ子達に手を引かれて、わけもわからない地下に連れてこられてさ~」
「小猿~、お前だってチビっ子じゃないか!!!」
「うるせえな、ワンコがデカすぎるんだよ!!!」
「なんやなんや…全てはウチの、ひーちゃんの功績やろ? ひーちゃんが旭はんと司狼はん連れて、魔方陣の切り離しにかかっていたから、上手く行ったんや!!!」
これは金髪の似非(えせ)関西人。
「いいや、全ては…緋狭さんのおかげだ」
俺は…魔方陣の上に眠ったように横たわる緋狭さんを見つめた。
「氷皇のおかげ…とも言えるけどね」
遠坂が笑った。