シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
 
こんな外貌でも、胡散臭すぎる"関西弁もどき"を話していても、情報屋としてのレベルはトップクラスだ。


彼が認めた"情報提供者"においては、事前打ち合わせをしていなくても然るべき時にこの『安愚楽(アグラ)』に現われる…五皇のように"必然"で動ける数少ない人間。


その情報ネットワークは日本を飛び越え、計り知れなく大きいものらしい。


誰もが彼を囲おうと躍起になるが、彼の情報は高額の上、彼自身"飼われる"のを良しとせず、自らの気紛れで同じISにだけ情報を提供する。


それも、聖の出す"試験"に合格するのが前提で。


――おお、あんさんが非情と名高い『漆黒の鬼雷』。ホンマ生粋のISみたいな…別嬪な外貌でいらはるなあ。


私は、風聞だけでしか知らない"見知らぬ人"を信用しない。


――確かに、今後が楽しみなお人や…。なあ、鬼雷はん…例えば…。


私は…聖を利用するつもりもなければ、一方的に質問してきた聖が、実は"試験"をしていたことすら気づかないまま…まるで無自覚でいつの間にか合格してしまったようで…その"合格のご褒美"として、欲しい情報を無料で1度提供して貰えることになっている…らしい。


本当に偶然が重なっただけの、私にとっては幸か不幸か…まるで突拍子もなく、使用回数限度のある情報屋を抱えることになった。


――偶然も重なれば必然になるんでっせ~。



聖が何を考えて私に恩を売っているのかは判らないが、私の力だけでの情報収集に限界が見える時は、利用してみようと…未だそれは保留状態。


それを使用する時期があるとすれば、今だと思ったのだ。


とりわけ、今のように…時間を急ぐ時は。


「鬼雷はん、珍しい格好やんけ。しかも青色なんて」


いつもの如く…どぎつい色のメロンソーダをストローで飲みながら、ピアスをつけた唇でにぃっと笑って見せる聖。


しかしいつ聞いても、胡散臭い…複合的な"関西弁もどき"。


たまにそれらしき言葉遣いになることもあるが、色々な形に乱れるのが常。


こんなおかしなものを日常会話で使用している関西人はいないだろう。


そして、彼を正そうという奇特な人間もいない。
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