シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「しかもその服…制裁者(アリス)のやんけ。鬼雷はん、随分な処に転職しはったんやな~。けど『白き稲妻』が主なら、やりやすいとちゃいまっか~? もしや、拷問ばかりの専制君主に辟易したとか?」
私は――
「ストップ、ストップやで~!!!
鬼雷はん、何で殺気出すんや~」
「"知って"いても口に出さないことが、ここの暗黙の了解(ルール)のはず。更には、ただの推測で"彼"を穢すな」
この場所には、聞き耳を立てている輩だって居る。
私が紫堂の警護団長の葉山桜であると言うことは、判っていても口にしないことはルールであり、更にそれ以上を詮索することなどは全くもってルール違反。
「彼を穢すつもりなら、私も容赦しない」
そう睨みつけると、聖は両手を挙げて、降参のポーズをとった。
「鬼雷はん…男の格好なさると、いつも以上に怖いお人にならはりますな~。ぶるぶるぶる~」
何が"ぶるぶるぶる~"だ。
この軽さが気に食わない。
だが、それが彼の真実の性質ではないと思う。
作られた感がするのだ。
裏世界に足を突っ込む人間は、極力"自分"の痕跡を隠したがる。
聖の…関西弁にもならない"訛(なま)りもどき"は虚構。
この妙に軽いノリも格好も然り。
実際は、これらとは無縁な世界に身をおいているのだろう。
もしかして、そう思わせておいて…ということもありえる。
そう簡単に"尻尾"を掴ませないよう、あらゆる"偽装"をしているのが聖という男。
私も特別、この男を詮索しようという興味もない。
ギブアンドテイク、ただそれだけだ。
「此処に来たのは――
暁の狂犬、のことでっか?」
聖は…銀色のピアスのついた薄い唇を、にいっと吊り上げた。