シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
鳴り響く、勝利のファンファーレ。
此処には対戦キャラしか現われない頽廃的な世界なれど、外界を結ぶ"ゲーム"を体感させる唯一の音色だけは、健在らしい。
だけどそれだけ。
敵が消え、また敵が現われ…ファンファーレが鳴り響く。
その繰り返し。
ゲームにおいては、決まり切った…連続技のパターンがある。
それはプログラミングの限界。
それを知り尽くした僕にとっては、その裏をかく…体術を畳みかけるだけで容易に勝つことが出来たんだ。
奥義など、発動するタイミングをずらせば怖くない。
そして僕には、心にゆとりがあった。
此処は、僕が得意とする0と1が織りなす電脳世界だから。
歪に目に映る…僕の住まうべき外界では、虚ろな顔の"僕"と不敵な顔の"芹霞"。
"僕"は動いている気配がないから…本体はこの僕だ。
紫茉ちゃんと潜った夢の世界とは、勝手が違う。
僕は直感している。
あの2人は…本物ではないと。
芹霞のあの顔は…"エディター"の顔。
尋常ではない程の冷たい体温と、遅い脈、壊れた表情を思えば…、あれは芹霞の肉体を"乗っ取られた"というよりは、"エディター"の息がかかった使い魔あたりと考えた方が妥当だろう。
恐らく今頃、体温はなく…脈拍もないはずだ。
ただの"モノ"。
だからこそ、僕は芹霞を"死人"のように感じたんだ。
いつから変化したのかは判らないけれど…判らない程、僕の心は乱れていたということなんだろう。
本物の芹霞はどうしているのか。
早く、此処を出ねば。
本物の芹霞に会って、僕の失態を詫びて、仲を修復したいんだ。
本物の芹霞は、どれ程僕への信頼感を回復させてくれるのだろう。
きっと、これは…絶望に打ちひしがれていた僕へのチャンスだと思うから。
本物ではなかったから僕の心が伝わらなかったのだと…そう言い訳を許して貰えるのなら、僕は早く芹霞を取り戻せねば。
ああ、何より芹霞を守りたいんだ。
僕が――!!!