シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
 
「Zodiac!!!?」



まるで想像すらしてなかった名前。


またしても、腹立たしいあいつらか。


「ここで俺が偃月刀振り回してたというのなら…俺、あいつらを殺ったのか?」


無意識の成せる業?


桜が、静かに首を振った。


「この会場は…あそこに見えるパネルスイッチで開閉出来るようになっている。

私は煌を追って、あの天井から此の部屋に下りてきたけれど…その時は既に密室状態にて、黄色い蝶が少女達の目を抉っていた状況だった。

そこにZodiacはおらず、そして私は、彼らを煌が斬ったのは見ていない。

この部屋の外から1人入ってきた芹霞さんも、外でそれらしき姿を見ていないという。

もしZodiacが、外に逃げ出さずに無事でいるのだとすれば…」


そして…桜は、大画面を見たんだ。



「この部屋内でZodiacが逃げ切れる場所があるとすれば。


玲様…」



何だか言い難そうに。



「うん。僕が閉じ込められていた電脳世界で…僕は、3つの存在を感じた」



話を聞けば…玲は、芹霞のニセモノによって、電脳世界だとかいう…玲だけが知り尽くすけったいな世界にいたらしい。


玲はともかく、そこに出入り出来る"奴ら"って何者よ?

玲と同種の人間なのか!!!?


「玲様…。Zodiacは…人間、なんでしょうか」


「少なくとも、学園祭で…人前で姿晒していたのだから、こちら側に"存在"できる個体であることは間違いない。


電脳世界でいえば、僕達と同じ実数の…0と1で構成されているものであったはずだけれど。

だけど僕が感じた3つの気配は…実数とは異質なる"虚数"だった」


「虚数!!? そんな…では、Zodiacは…?」


「ちょっと待て。"虚数"って一体何だよ!!?」


意味ありげなそれ、スルーしちゃまずいだろ。

そこ、判らないと全然意味判らねえし。


俺の質問に――

2組の冷ややかな眼差しが送られた。



どうやら――

意味が判らず、簡単にスルーできなかったのは…俺だけだったらしい。



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