シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

いくら一流のメイクさんだからといって、素材悪ければ何もならない。

こんなお粗末なのが、店の命運背負ってテレビに出れるわけないじゃないか。


そういうことは、玲くんが出れば一発解決。

頼るなら玲くんに…。


そう口を開こうとした時、


「芹霞に虫が寄り付いたら、貴方は責任とってくれますか?」


「は?」


おかしなことを言い出す玲くんを、ぽかんと見つめた。


虫?

何で虫?


思わず…蛆を思い浮かべてしまい、顔を顰(しか)めさせた。


「今でさえ大変なのに、全国規模で虫がわんさか沸いたらどうするんだよ。何で芹霞を宣伝しないといけないんだよ。自分の首絞めるだけじゃないか…」


ぶつぶつ何か聞こえるけれど。

いつものにっこりが出来ない程、機嫌が悪くなってしまったらしい。


「では彼氏さん。じゃあ此処はちょっと趣向を変えて…」


ちらりとスタジオに流し目で、ちょいちょいと玲くんを呼ぶ店長。

その時、ショートケーキのイチゴがころりと床に落ちてしまい、とりそこなったあたしは、更に机の下に転がしてしまい、潜ってイチゴを追いかける。


頭上の…机の真上でひそひそ声がする。


「……隣……スタジオ…全国放映……チャンス…綺麗…写真も…」

「ん……」

「録画…DVD…Blu-ray……高画質で永久保存…」

「永久保存……」

「……上…APEX…編集……知り合い…速攻…」


ああ、やっととれた。

さすがにこのイチゴは食べれないや。

おいしそうなのに勿体無い。


「ふう……」


机から顔を出すと、


「……了解です」



にっこり。



笑顔の玲くんが、店長さんと握手をしていた。
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