シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

「遠坂由香はゲームを通じて、無事は確認出来たが…連絡がとれぬまま。

私が玲様と合流出来たのも、先刻だ」



打ち合わせでは、"約束の地(カナン)"で櫂についた遠坂が玲に連絡をとる手筈になっていたはずだけれど…まだ連絡がとれていないのか。


それは手段だけの問題か。


それとも…櫂に何かがあったのだろうか。


櫂のことを口に出さないのは、桜の警戒心だろう。


櫂は…今、生きているよな?


不安が胸を過ぎり、俺は顔を上げた。


桜が俺をじっと見つめていた。



「櫂様がもし生きられていたら…

芹霞さんの状況を知らない。


自分の存在が…芹霞さんの心から消えていることは。


知ったら…どう思われるか」



どくん。



「刹那の愛を受ける代わりに――

12年間の思い出を消された櫂様は…

本当に幸せだと思うか?」



どくん。



「玲様は…忌むべき紫堂の犠牲となり続けている。


お前だって判っているだろう。

紫堂の中での玲様の位置づけを。

かつて次期当主まで上り詰め、周囲からちやほやされていたはずの玲様が、今どんな扱いを受けているか。

紫堂は、普通の…常識が通用する場所ではない。

雑魚まで当主の色に染まり、それが罷(まか)り通る家だ。

玲様の蔑視と冷遇は…日頃目を覆う程のものだったはず。それが次期当主に戻ったからといってあの当主が態度を軟化させ、玲様を取り巻く環境が改善されていると思うか?」


どくん。
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