シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
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――久遠様、もう少しで時間です。テレビを見ている暇はない。さあ、下で支度を。


蓮が…久遠を、そして久遠が久涅を急かすように、そそくさと階下に消えたのは、多分…陰鬱な俺の表情を見せないためだろう。


俺は…久遠に手を踏みつけられて耐えることが出来ても…芹霞に関することは自制が利かなくなる。


どんなに隠しているつもりでも、実際は周囲が懸念するだけの明確な表情をしていたのだろう。


こんなに…体が冷たいんだ、心ならずも震えていたかもしれない。


寒い。

目の前が…暗くて、寒い。


まるで――闇。


よからぬことばかりが俺の心を絡めとり、身動きできなくて苦しい。


――紫堂櫂を愛してる!!!


現実だったはずだ。


それに胡坐を掻きすぎて、永遠にそれは変わることはないと…そう思っていた俺は、

心の拠り所を、活力の源を闇に奪われた気がして――心が溜まらなく…


苦しかった。


恩人の久遠にすら触らせることもしなかった芹霞代わりの布。

動揺している俺の振動で布端が揺れる度、布そのものの存在が何だか虚しく思えて。


会いたくても会えないから、更に意気込んで愛を注ぎいれていた分――

愛の証だった布が、まるで夢の住人から貰ったもののように、儚く色褪せていくようで。


布に、意味など何もない気がして。


玲の幸せそうな笑顔を思い出す度…心が壊れそうに痛むんだ。


玲を幸福にしたかった。

芹霞と結ばれる結末がベストなのは判っている。

だけど…それだけは俺の心が認めない。


ああ、玲を裏切り者と罵れれば楽になれるのかもしれない。


だけど判っているんだ。

玲は俺を裏切っていない。

玲を責めるのは筋違いなこと。


こういう事態を常日頃懸念しながら、


――紫堂櫂を愛してる!!!


それでも芹霞の手を振り解き、"約束の地(カナン)"で蘇ることを望んだのは俺。


玲は何度も俺に警告した。


それを取り合わなかったのは…俺だ。


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