シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
隣室で何が起きている!!?
考えてみれば、彼が戻るのが遅すぎる。
彼は――
どうしたんだ!!!?
僕は慌てて部屋を出て、隣室のドアを開けた。
鼻につく異臭。
「三沢さん!!? みさ……」
そこには――
三沢さんが壁に張り付くようにして立っていて。
床には俯せになった女性が、長い髪を散らすようにして倒れていた。
その姿は尋常ではなく――
「れれれれれ玲くん!!!」
芹霞が震えながら、僕の後ろに隠れる程に。
「何、何、何!!!?」
その女性は…
下半身がなかったんだ。
腹部から上の…上半身だけのもの。
グロテスクな赤黒い内臓の名残が、不規則な千切れ方をしている上半身の底辺にぶら下がっている…そんな醜悪な肉塊。
状況証拠的に…"吹き飛ばされた"のだろう。
四方に弾け飛んだかのように…真紅の飛沫の痕跡が凄まじかった。
「三沢さん…」
三沢さんの手には、金色の万年筆が握られたまま。
事態を悟った僕は、彼に訊いた。
「正体不明のZodiacの機械音…
その万年筆に充てたんですね?」
彼は小刻みにこくこくと頷いた。
金の万年筆に音を充てれば…EMP爆弾となる。
つまりそれは――
「その音は…"虚数"に変換している。
言い換えれば――
Zodiacの曲は、0と1の世界を侵蝕するものだ」