シンデレラに玻璃の星冠をⅡ


途端、久涅の顔が曇る。


「何故だ?」


「そりゃあ…燃えた神崎家の住人としては、放っておけないし」


「……。帰りたいのか?」


久涅の目に…切なげな光が横切った。

苛立っているような、苦しんでいるような…。


それはあたしが理解出来ない類の光で。



「そりゃあ…「駄目だ」



突如、凍り付くような険しい顔をした久涅は、そうぴしゃりと否定の言葉を放ち、すくりと立ち上がった。


「お前の記憶を刺激するものには近づけさせん」


「記憶って…神崎家はあたしの家なんだし…」



何と理不尽なことを言い出すんだろう、この人。



「家に意味などはない」



それは…憎悪のような鋭さを秘めた言葉で。



「家など――

滅んでしまった方がいい!!!」



怒鳴るようにして言い捨てると、久涅は怒ったように大股で部屋から出て行ってしまった。


「お前は、ずっとこの家にいろ!!!!」


バタン、と乱暴にドアが閉められた。



一体、何なんだろう?


お出かけ…しようとか言って無かったっけ?


で、神崎家に行きたいって言ったら…この結末?


久涅の心の動きが、まるで理解できない。


あたしの頭の中はハテナマークばかり。

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