シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
現れた銀色氷皇。
現れた"制裁者(アリス)"。
煌に引き続いて、次々と制裁者(アリス)が姿を見せ始めたのなら。
主を裏切って行動する"彼"が現われるのも、時間の問題。
ならば――
僕が気配を読めない"子供"は…
「三沢さん!!! 罠だ!!!」
芹霞を残して、僕が急いでドアから飛び出ると同時に――
車に向けて飛んできた"何か"。
明らかな敵意を乗せて、隔たりのない真上から…狙い済ましたように弧を描いて落下する"それ"は、素人が放った玩具ではない。
僕は芹霞を抱きこんで守りながら、"それ"を手刀で叩き落とす。
それは座席にぶつかって跳ね上がり、
前の座席の背に深々と突き刺さる。
この鋭利な輪郭を持つものは――
双匕首という暗殺器。
これをもつ子供は…。
「玲くん、青い光だ!!!」
芹霞の声が響く直前、それを視界に認めた僕は、
「三沢さん、伏せて!!!」
座席から双匕首を抜き取り、直ぐ様青い光に向けて投げたんだ。
青い光が双匕首にぶつかる。
「うわわわわっ」
その隙に三沢さんが、腰を抜かしたように座り込んだまま…それでも防御本能のなせるまま、足だけ動かして蜘蛛のように後退してきた。
凄まじい早さ。
人間とは思えない奇妙な動き。
少しばかり…面食らってしまったけれど。
そんな時――
「!!!」
青い光の中で、双匕首がどろどろと溶融され、最期の命を散らすかのように…青白い炎のような光が上下に拡がった。
こんなにじっくりと、ものが溶ける様を見たのは初めてだった。
華々しい。
閃光のような鋭い眩さが、僕の目を刺激した瞬間。
――電子基板のようなものが…。
不意に…誰かの声が蘇った。