シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
それでも双匕首は容赦なく放たれる。
弾く角度も考えねばならない僕。
このままだと際限なく、体力勝負になりそうで…心臓に不安を抱える僕は、それを避けたいと唇を噛んだ。
僕のバングルにある月長石。
それに頼るしかないのか。
東京の地にてコード変換が出来なくなりつつある僕は、これが最後の砦のようなもので。
もしもの時の為に、電脳世界から供給してきた力の源。
不用意に…使用して備蓄量を減らしたくはないけれど。
だけど――。
そんなことを言ってられない気がして。
僕が、月長石から力を発動させようとした時だ。
「ぬおおおおおお!!!」
芹霞が、雄叫びのような勇ましい声を上げて、飛び込んできたのは。
そして――
「玲くんの足引っ張るんじゃない、このクモクマ!!!」
そう怒鳴り、三沢さんを後ろに突き倒した。
芹霞にもあたらないように弾きながらも、僕は動揺していて。
芹霞が三沢さんに背を向けながら、彼の両足の間に身体を入れると…三沢さんの両足を両手で掴み、ずるずると引き摺って歩き始めたんだ。
まるで三沢さんを使って、地ならしをしているようで。
「ほら、車に帰るよ!!!」
毛むくじゃらの大男が、17歳の華奢な女の子に引き摺られている図は異様で。
飛んでくる双匕首の数も減じたようにすら思える。
仰向けならまだしも…三沢さんは俯せ状態。
あれなら…痛い。
「嬢ちゃん、体の皮膚が擦れて…」
「脱毛よ、脱毛!!! あたしは同居してる大男が、緋狭姉の酒に付き合わされて居間で"へべれけ"になっているのを、二階までこうして引き摺って階段上って部屋に戻してるの!!! 手のかかる大男の扱いには慣れてるから、気にしない!!!」
ずるずる、ずるずる…。
「気にしないというより、顔がああ…」
「遠慮しないの。あたし、呉羽サンに腹と二の腕ぷよぷよを判られてしまって、ショックでショックで。運動しないでケーキばかり食べていたツケ、此処でちゃんと元に戻してみせる!!!」
そう、ガッツポーズをしながら。