シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「ようやく…逢えたね」
制裁者(アリス)の制服を着て、
双匕首を操る元制裁者(アリス)は1人しかいない。
「ようやく…出番が来たんだ。
これが新生組織での…
――初任務だ。
嬉しいやら…悔しいやら」
何で"悔しい"という表現になるのか判らなかったけれど。
それ以上にひっかかったのは――
「"新生組織"…?
制裁者(アリス)が新たに蘇ったということか?」
邪気に満ちた笑いに警戒しながら、僕は聞いた。
「BR002には会った? 気持ちよく首を刎ねていたでしょう? 僕見直しちゃったな、やっぱり昔取った杵柄ってもんは、そう消えないんだね」
何か…知っているのか。
「煌は制裁者(アリス)には戻らない」
「へえ? 信じちゃってるんだ?
体内から蛆を吐き出していたBR002が、すかっと綺麗さっぱりになっていたのが不審に思わないんだ?」
「蛆を吐く? 操ったのではなく?」
思い出すのは横須賀港。
真紅の邪眼にて煌が現れたと同時、蛆と蝶は櫂に向かった。
「ふーん、隠してたんだ。
そんなことどうでもいいけどさ」
蛆を吐くのは、使い魔のはず。
だとしたら煌は?
僕を助けると笑って去ったあの煌は?
僕の心は迷いなく――
あれは真実の煌だったと叫ぶ。
仮に紛い物なら、芹霞が感じるはずだ。
僕でさえ見つけ出した芹霞は――
寝食を共にする煌を間違えるはずはない。
「BR002は特殊仕様だからね。
何から何まで例外尽くしでも当然だよ。
だって"ヨウシュ"…ああ、これは言っちゃイケナイ"秘密"だった」
わざとらしく口に手を押さえて口を噤んだ凱。
「"ヨウシュ"?」
凱は含んだ笑いを見せる。
「聞いてないことにしてよ、『白き稲妻』。
判られたら、僕…"あいつ"に仕置きされちゃうじゃないか。情け容赦ないから怖いんだよ、昔から」
言葉とは裏腹に、愉快そうな声音で大笑いを初めて。
"昔から"
それは仲間ということか?
それとも――
8年前に緋狭さんに潰されるまで、
制裁者(アリス)の責任者だった氷皇のことか?
僕の想定外の…人間のことか?