シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
 
「潔い貴方の決断に敬意を表し、

今だけは攻めるべき相手を、貴方だけにして差し上げますわ。

今だけは――」


時間が経てば車を追跡するのも吝(やぶさ)かではないと、そんな含んだ笑いを見せる雅。


「見くびられているようだけれど…

僕は"負けて"あげるなんて言ってないからね?」


僕は、青い力を解放した。


「僕に敗れた君が、その屈辱に矜持を捨ててまでも、その力を増強したというのなら――」


力は――

青色から白色に変わる。


「僕の力も強めればいいだけだろう?」


波動状に力が拡大し、火花が散った。


白い電撃(スパーク)。


同時に放たれた鉄環手が…その輪郭が溶け出した。


「くっ!!! オリジナルは・・・流石です」


12の鉄環手が弧を描き、制裁者(アリス)がそれに守られて突っ込んでくる。


何度も繰り返される合体技でも、僕の白い光は、敵が僕に行き着く前に溶かす。


悲鳴。

絶叫。


何度来ても同じだ。


人体であろうが、鉄であろうが。

無力化してやる。


生きるという希望を捨てれば、

それを力の糧にさえすれば、


僕の力はどこまでも強まる。


さあ…。

思う存分、力を使え。


芹霞がくれた月長石。


最後の最後に――

華々しく…

僕の愛を散らしてくれ。


僕の力に触れた制裁者(アリス)が消えていく。

次々と溶けていく。


高揚。



だけど…


ああ――。


体が…その力を放出し続けることに悲鳴を上げている。

壊れると警告を発している。


乱れる僕の心臓。


シンゾウガモタナイ。


発作の予感。


それでも、"男"なら…

愛の為にしないといけないことがある。


この身を打ち捨ててでも、死守しないといけないことがある。

かつて櫂が、自然の理に逆らってでも、芹霞を生かしたように。


芹霞を守る騎士は、櫂じゃない。


例えそれが自己満足であったとしても。


僕の矜持に賭けて、その役目は僕のものだ。


今、この時だけは!!!


僕は左胸を手で掴み、まだいけると励まし騙しながら、更に力を増大させた。


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