シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
赤と青の漫才のような会話が一段落した頃、
「あの…。やはり私は――
どうしてもこの服を着なければなりませんか」
最後に…駄目元で私は聞いてみた。
今、私が着ている格好。
青。
まるで氷皇の瞳のような藍色。
そしてその服の形状は記憶がある。
詰襟の…裾丈の長い学ランのような――
制裁者(アリス)の服。
違うのは色だけ。
過去何度も本物の白い服を見ていただけに、それがやけに胡散臭い偽物の気がしてたまらない。
こんなに深い青色にするならば、いっそのこと黒にしてしまえばいいものを…。
「あはははは~、青いサクラチャン~。名前も変えちゃう? でも"アオイ"は駄目だよ、俺の専売特許。だけど誰も呼んでくれないけどさ~。あ、俺の未来のお嫁さんだけが呼んでくれるけどね~。あはははは~」
誰が、未来の"嫁"だ!!!
憤る心を抑えながら…私は服の色をみて益々げんなりした。
鏡がないから確かめようは無いけれど、想像するに容易い自分の姿。
これならまるで、歩く氷皇の広告塔。
胡散臭さ満載だ。
「サクラチャンが選んだんだよ~、アカの真っ赤なフリフリワンピースにするか、俺のそれにするか」
愉快そうに氷皇は言う。
緋狭様が両手で見せたのは、宝塚の世界かと思われるような…レースとフリルが派手に散らされた、真っ赤なドレス。
氷皇が手にしていたのは、青一色の…男物だと思われた畳まれた服。
私は――
黒が好きなんだ。
しかしどちらかを1つ選べといわれ――
私は緋狭様が好きなのに。
氷皇なんて大嫌いなのに。
意思とは無関係に無意識に動いた私の手は、氷皇の服を受け取っていて。
「よおし、アカ!!! この賭けは俺の勝ち!!!」
私は、賭けの対象とされていたらしい。
きんと…殺気のように鋭く剣呑な緋狭様の眼差しが向けられて、本能的な寒気がしたけれど…。