シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
氷皇の酷薄な顔を知っていても動じることない紅皇。
誰の言葉にも耳を貸さない自分勝手な男が、唯一言葉を聞き入れる女性。
そして――
途端に氷皇の顔が、いつもの胡散臭いものに覆われる。
それは見事なまでに――
「ちゃんと届けてね、サクラチャン?
あはははは~」
何事も無かったかのような、"前"に巻き戻される。
氷皇を抑えられるのは、此の世では緋狭様ただ1人。
私達はいつだって――
氷皇の前では、ただの駒にしかすぎないのだろう。
何を企んでいるのか。
私達に何をさせようとしているのか。
どの程度緋狭様の意向と交わり、どの程度違えているのか。
どの程度の密接な関わり合いがあるのか。
全てが謎のまま。
「はい、サクラチャン。このラブレター、お願いね」
緋狭様の力添えがあったとはいえ、審判役であった氷皇に見逃してもらえたことが事実なら、私はその恩故…拒みきることは出来なくて。
「あはははは~。サクラチャン、いい子いい子~」
どんなに腹立たしくても。
封筒を手にするしかない。
否。
手を掴まれ、無理やり握らせられたのだけれど。
申し訳ありません、玲様。
不甲斐ない桜は…拒みきれませんでした。
私は…青い封筒を握りしめたまま、がっくりと項垂れた。