シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「あはははは~。配達頑張ってね~」
胡散臭い笑い声が響く中、私は配達人としての使命まで帯び、
「じゃあ、"また"ね?」
この先二度と会いたくもない青色を軽く睨み付け、
「桜。坊に会えたら、伝えてくれ」
緋狭様の言葉に、私は頷いた。
「よく状況を見抜き、苦渋の決断をしたと」
それは櫂様は生きているという前提で。
慈愛深い眼差しは、苦しげに細められた。
恐らく…緋狭様にとっても、櫂様の胸を抉るのは"苦渋"であったのだろう。
「坊の決断がなければ…今こうして私は桜の前にも居れぬ。今頃私は、命令に従ってお前達の命を奪っていたやもしれぬ」
それだけ事態は深刻なのだと、遠回しに告げられる。
「そうだね~。カイクンが俺を失望させていたら、"今"なんてな「緋狭様」
私は氷皇の言葉に被せた。
「サクラチャンは、見掛けによらず結構大物だよね」
そんな言葉など、私の耳には届いておらず。
「それは、"ご褒美"として、櫂様に直接言ってあげて下さい。櫂様は、緋狭様を…ずっと信じておりました。きっと、何よりも喜ばれるかと」
「そう…だな。そう言える…時が来ればいいのだが」
儚げな黒い瞳には、何が映っているのか。
最強の肩書きを持つ彼女が、何故ここまで頼りなげな表情をするのか。
何が彼女を縛っているのか。
少なくともそれは、氷皇の画策ではない。
氷皇でも断ち切れない"柵(しがらみ)"があるように思えるのだ。
いつでも私達を救う側にいる緋狭様は、誰が助けてくれるのだろう。