シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
久涅に傅(かしず)いた緋狭様。
櫂様を殺すことでしか、櫂様を救えなかった緋狭様。
いつもの緋狭様の慈悲深い色を抑えて、あくまで紅皇としての威厳でしか私達に接することが出来なかった緋狭様。
緋狭様は敵ではないという前提で考えてみれば、その正体は判らなくとも、"何か"に縛られ苦しまれているのは緋狭様も同じ。
その緋狭様を救えるのは…誰?
氷皇?
それだけは…嫌だった。
嫌いな男に、私達の緋狭様を救わせたくない。
「緋狭様、助けて頂きましたご恩は、私達は生涯忘れません。緋狭様は、いつまでも私達の尊敬する師匠です。
きっと櫂様が此処にいらっしゃれば、こう言われるでしょう」
私は、緋狭様の黒い瞳をじっと見つめた。
「"今度は俺達が、緋狭さんを助ける"、と」
緋狭様は切なそうに笑った。
氷皇は嘲るように笑った。
それは対照的な笑い方であり、もしかすると…いや、もしかしなくても、私など足下にも及ばない最強の方を相手に、大それたことを言いのけたかもしれないけれど、…不敵な櫂様ならきっとそう言うと思う。
そして私達はそれに同意するはずだ。
「未だ状況が掴められないのが現状ですが、必ず私達は…緋狭様を取り巻く真実を捕まえて見せます。その為に櫂様は決断された。玲様も煌も私も…覚悟は出来ています。困難など乗り越えて見せます。伊達に…緋狭様に今まで鍛えられてません」
それは、私の…私達の決意。
――約束、して欲しいんだ。
「"信念を忘れるな"。
それが…私達と櫂様の、"約束"でもあります」