シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「……何だ、アオ。そのにやにや顔は」
「ん? いやアカ、目から鼻汁(はなじる)垂れてるなって」
すると――
「ア、アカ…。一応…俺上司だし。そういう…"いきなり"はよそうよ」
殺気。
態勢を低くした緋狭様が氷皇の鳩尾に手刀を入れ、氷皇は胡散臭い笑いを響かせながら、血を吐き捨てた。
「黙れ、アオ!!! 慎ましき婦女に、"じる"とは何だ、"じる"とは!!! それに。お前のような存在自体が嘘臭い、無粋な輩に…何故いちいち"お伺い"をたてねばならぬ!!」
「あはははは~。血を出しているのは俺だけど、慎ましきアカは血気盛んだよね~」
判らない。
本当にこの2人の関係はまるで判らない。
だけどあの氷皇に一瞬にして血を流させられるのは、紅皇しかいないのは確か。
そして殺気を出した紅皇の攻撃に、血を流しながらも態勢を崩さずに笑っていられるのも、氷皇しかいないのも確か。
この2人より――
強い者などいない。
――…はずだ。
居たらもう…
此の世の者ではないと思う。
「桜」
突然名前を呼ばれ、私は緋狭様を見つめた。
「芹霞が――
坊の記憶を無くした」
「え?」
――紫堂櫂を愛してる!!!
あの…決死の芹霞さんの想いは、無くなっていると?