シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

・狂宴 桜Side

 桜Side
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東京都江東区豊洲。

上岐物産本社――。


かつて私は、玲様の命令でこの本社に潜入しようとして…調査を続行出来ずに今までいる。


数年前の東京の全電力の停止時、その一瞬で情報が流出し、甚大な被害を被った…その企業の1つがこの上岐物産だった。


あの停電の僅かな刻で、"約束の地(カナン)"らおける白皇の創出した機械の人工知能が、意思を持つに至った。


停電を誰かの故意的な"意思"によるものだと仮定すれば、被害者に共通項はないのか…その因果関係を調査するはずだったのだが、今、それどころではない事態に陥っている為、一時休止状態だ。



太陽光が差込む時間帯であれば、目映いばかりの光を反射するだろう…そう思われる、硝子張りの建物。


「この建物は、真上から見たら…十字架の形になっとりますわ。外国の教会真似っこですな」


たかが物産会社が、教会に相似させたのは…意味があるんだろうか。

まるで関係がない気がするのだが…。


――ひー!!! 話が違うだろ!!! 何で全員で上岐に向かう!!?


私達が、七瀬紫茉救出を決意し、その為に朱貴と聖が向かう上岐物産に同行しようとした時、朱貴が明らかに嫌悪に顔を歪めさせた。


――俺1人で出来る!!!


しかし聖は、人差し指を口にあて、ちっちちっちと舌を鳴らして、指を左右に振った。


――朱やん。狂宴に持ち込むのが朱やんの役目。それで精一杯のはずやろ?それとも何? ウチと会ってない間、技でも磨いたんかいな? あっちの。


あっちとはどっちのことなのか判らないけれど、朱貴は途端翳った顔で俯き…そして皇城翠に視線を向けて、また俯いた。


――なんや、気になるのは翠はんのことかいな。他はどうでもいいんか?


けらけらと聖は笑うけれど。


――俺は別にいいぜ? そっちの世界…面白そうだし。


馬鹿蜜柑…。

本当に、分かっているんだろうか。

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