シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

そっちの世界とは、どの世界を想像しているんだろうか。


怪訝な顔を向けた私に、煌はにやりと笑って耳打ちした。


――朱貴、ホストなんだよ。


凄く自信満々で。


――やっぱ、可愛がっている奴に、女に媚びている姿は見せたくねえわな。


そして。


――よし。小猿のことは心配すんな。大丈夫。目を隠してやる。


馬鹿蜜柑…。


わざわざ皇城翠の前で宣言してしまうのなら。


――ワンコ、何で目隠しだよ。何で俺、仲間外れなんだよ。


期待を裏切ることなく、キーキー騒ぎ出して。


――例えば。お前の惚れた奴が、恋人になる条件に、他の奴3人に"ちゅう"して胸揉んでこいと言ったとする。


何だ、そのたとえは。


それでどうして翠と私を見る?


――その姿、お前惚れた奴に見られたくねえだろ?

――うん…。


――目を瞑っていて貰いてえだろ?

――うん…。


凄く、不可思議なのだが、

皇城翠があっさりと了承したのだ。


――俺、見られちゃ嫌な処は目を瞑ってるから。朱貴、頑張れ? 何を頑張るのか判らないけれど。


そう朱貴に笑いかけて。


翠と…得意満面な顔で先輩風吹かしている馬鹿蜜柑以外、胡乱な眼差しをしている。


――いやあ、動物には動物しか判らない、本能的な言葉というものがありますんのやな~。


聖の言葉の方が、やけにしっくりときた。


――ま、小猿のことは任せろ。だからお前、飲み過ぎねえようにしろよ。


ぽんぽんとやれに馴れ馴れしく朱貴の肩を叩けば、


――何を?


すると聖が一人爆笑して。


――ま、ある意味…"飲み過ぎないように"には間違いあらへんな。凄く不味そうなあの濁った液体を…。


――ひー…。それ以上口を開くな。


笑い転げる聖と、殺気を放つ朱貴と。


恐らく――

真実を知っているのはこの2人だけで。


馬鹿蜜柑の思考は所詮馬鹿蜜柑なんだろう。

それに諭されるのなら、所詮はその程度だ。

< 891 / 1,495 >

この作品をシェア

pagetop