シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
 
「何で…ホストの接待が、こんな地下で…しかも抜け道があるんだろ」


馬鹿蜜柑がぶつぶつと呟いている。


「うわっ…なんだ、血!!? 何で壁に血!!?」


皇城翠が驚いた声を発する。


ひんやのと冷たい…洞穴のような無造作に穴を掘っただけのような道。

移動出来ればそれでいい…そんな雰囲気の道は、怨念のような…邪気に満ちている。


何かが…逃げだそうとして、手で掘っていた道なのだろうか。


処処に…剥がれた爪や指の…白骨化した残骸が見える。


今今のものではない。


かなり前から、この道は存在していたんだろう。


道とは言えぬような…通路。


やがてそれは…行き止まりとなる。


「声が聞こえるな…」


馬鹿蜜柑が、やがて足元の…格子状の50cm四方の排気口のようなものを見つけた。



そこに顔を近づけて、下の様子を伺ってみた。


何だ?

大勢の人間が集まっている。


男も女も、同じような白い布を纏っている。


しかも顔には仮面。


仮面舞踏会に出席するような…目許だけを隠す、ベネチアン風のもの。


それが異様で。


「何かのパーティでも始まるのか?」


皇城翠がそう首を捻ったけれど。


何か…空気が違う。


そしてこの甘ったるい…酷く官能的な匂い。


麝香(じゃこう)…?



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