シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

彼女は…判っているのだろうか。

朱貴が身体を張って、彼女を穢れから救おうとしていることを。


そうしている自分に、誇りをもっていることを。


そこまで愛されているということを…


彼女は気づいているのだろうか。



気づいていないのであれば…それは…。



「アホハット!!! こうなるの判ってて、なんで朱貴行かせたよ!!?」


この状況に耐えきれなかったのは馬鹿蜜柑。


依然騒ぐ翠の目を塞ぎながら怒鳴った。


「あんなのにさせたのは、お前の策のせいだろ!!?」


「策…というか、判っておりますんや。ウチも朱やんも…。それに、あれはウチらにとっては珍しいことではないさかいに…」


まるで、慣れていると言わんばかりに、聖は薄く笑う。


「は!!?」


「朱やんは拒んでも、朱やんが生きる為には…あれは必須のことなんや。無駄に力があり顔がよければ、何処までも悪夢はついて回る。しかしだからこそ、紫茉はんを助けられる。皮肉なもんや」


「お前、何他人事なんだよ!!! それしか方法がねえとしても、何で助け出そうとしねえんだよ!!! ありえねえだろうよ、お前朱貴の知り合いなんだろ!!!? 何で朱貴追い詰めるよ!!! あれは…あれはあまりにも酷えだろうが!!!」


「ワンワンはん…。此の世は、綺麗事ばかりが通用する程、甘いもんではないんですわ」


次第に――

温度を無くす聖の顔。


煌はゆっくりと目を細めていく。


「どんなに堕落しようとも、生きる為には…使えるもんは使わんといかん…そんな人間もおりますんや」


それはぞっとする程の冷淡さで。
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