俺様専務とあたしの関係
フラフラする足取りで応接室を出てデスクへ戻ると、同期の女の子たちが3人、あたしに駆け寄って来た。
顔には、“待ってました!”と書かれている。
「ちょっと、佐倉さん!聞いたよ。新しい専務の秘書になるんでしょ!?」
「えっ!?何で知ってるの!?」
正式な異動の発表はまだ来週よ?
さっきの上司の話はあくまでも内示だから、あたししか知らないはずなのに…。
目を丸くするあたしに、同期の一人は興奮気味に言った。
「社内で、すっごい噂になってるよ?あたしもなりたかった~!イケメン専務の秘書に!」
“イケメン専務”じゃなくて、“俺様専務”でしょ?
あたしは呆れつつ、でも平然として返した。
「イケメンかどうかは知らないけど、“俺様”で有名な人よ?」
すると、彼女はうっとりとした顔で言ったのだった。
「イケメンな上に、ちょっと強引な俺様だなんてサイコー」
と…。
だったら、あんたが代わりにやってよ!!
そんな言葉が喉まで出かかりながら、あたしはただ微笑みを浮かべた。
これ以上、付き合いきれないわ。