天空のアルカディア
『王女が着いたか…』


「はい、しかし騎士達は全滅しております」


『まぁそうだが…』


部屋で司祭は床に膝をつき、先ほどのマリア達と同じような格好でいた


だが、祈りなどしていない


祈りに見せかけた念話


相手は中年に近い男性


偉そうな態度からしてかなりの地位を持つようだ


「そちらは計画通りなのでしょうか?」


『私を誰だと思っている…アリスは拘束済みだし、増援に見せかけた3万の軍は明後日にもそちらには着くはずだ』


「申し訳ありませんでした。しかし、あの数のウルフと変異体の怪鳥がやられるとは…」


『ふんっ、腹立たしい…バルトの(魔術)とやらもこの程度という事だ』


「しかし、魔物を操る(魔術)とやらがなくば、騎士は葬れなかったでしょう」


『ふん、所詮早いか遅いかの違い。戴冠式までには私の軍は辿り着いていた。どのみち殺す事に変わりはない』


「…事が成功した暁には」


『分かっている。マリアを殺し、アリスと私が婚約し、私が王となれば報酬は望みのままだ』


「一つお聞きしてよろしいでしょうか?」


『なんだ?』


「何故マリア王女でなく、アリス王女なのでしょうか?」


『そんな事も分からんか。マリアはもう操り人形とするには遅い。そんな奴を妃としていれば私が王となった後、内から崩されるだろう』


「ほう…」


『その点、アリスは12の子供。これから私が教育すれば将来も扱いやすい』


「なるほど…ランス殿の知謀には感服致しました」


『当たり前だ。それより気取られ、王女に逃られるな。その時は…分かっているな』


「気づくはずもないでしょう。それではこれで…」


司祭は瞼を開け、1人ほくそ笑んだ






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