不良の有岡について。

私はしゃがんで、ポケットの中からティッシュを出した。それで涙を拭く。

「男なんだから、泣かないの。」

どこかで聞いた無理な言葉を口にしてみる。

心細かったんだと、思う。

もしかしたら、このまま自分はここで、ずっと一人で、誰も来てくれなくて。

まだ幼稚園の子が怯えるには充分過ぎる。


「おねーちゃん。」


嗚咽の中、初めて言われた言葉に驚く。

そして、首に腕を回して抱きついてきた。

子供って、なんでこんなに生暖かい生き物なんだろう。

弟は私の首にしがみついて泣いていた。


そうして、私は決心をした。



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