ショコラ~愛することが出来ない女~
夕食を食べ終えて、私は部屋で音楽を聴いていた。
クラシックなんて高尚なものは好きではないので、80年代の洋楽が主だ。
普段はどちらかといえばテレビを見るのだけれど、心が騒いでいるからかテレビの音は逆に耳障りな気がした。
やがて玄関先で物音がし始める。
そうだ。合鍵も返してもらわなくちゃ。
出来るだけ冷静に音を拾った。
勢い良く扉を開ける音、靴を脱ぐ音、そして廊下を走りリビングの扉を開ける彼。
大丈夫、私はちゃんと落ち着いてる。
「康子さん!」
「いらっしゃい、庄司くん」
「さっきの電話は一体なんだよ」
「言った通りよ。分かるでしょう?」
彼は汗を噴出しながら、血走った目で私を見る。
「白紙って、保留って意味?」
「違うわ。別れましょうって意味よ」
「どうして? 舞のことなら心配しなくていい。康子さんが反対するなら、亜衣の方の両親に頼む。あそこは家も近いし、親と引き離すことにはならないだろう?」
「そういうことじゃないのよ」
「じゃあ何だよ!」
語気が荒くなっている。
彼にとっても色々なことがありすぎているんだ。
冷静さを保つキャパシティはとうに越しているのだろう。