ショコラ~愛することが出来ない女~
「ああもう」
疲れた、はっきり言えば。
だから少し誰かに甘えたい。
ううん誰かじゃない。
『彼』に甘えたい。
そう思いながらじっと見ていると、中から人影が動き、私に気づく。
長身で広い肩、体つきだけ見ればスポーツでもする人かと思うけれど、彼は運動はそれほど得意じゃない。
彼のその上半身の逞しさは、料理の腕を磨くための鍛錬の副産物だ。
彼は驚いた顔をして私を見つめる。
けれど、すぐに駆け出して来て窓際で笑った。
前より皺が寄ったかも、なんて自分の事を棚に上げて思ってしまう。
何度も別れを繰り返してるのに、どうしていつもこんな風に笑うのかな。
お陰で胸が疼く。
バカみたいだなって思うのに。
できるだけ表情を変えないように努めながら、彼の名前を呼んだ。