ショコラ~愛することが出来ない女~
「仕事中だった?」
「いや、ちょっと試作品を試してた」
「ふーん。最近詩子はどう?」
「いつも通り。アイツには頭が下がる」
「そうね」
上滑りする会話を、私は楽しんでいるんだろうか。
「食べて見る? 試作」
「そうね。頂こうかしら」
「じゃあ、仕上げるから待ってて」
そう言って厨房に下がっていこうとする姿を追いかけた。
「作ってるとこ、見せてよ」
ちょっとだけぎょっとした顔で振り向く。
驚かしてやったと思うとなんでか気分がいい。