咲き舞う華は刻に散る


しばらく歩くと、景色が良い小高い丘に着いた。



今は夕暮れに近いせいか、空はうっすらと赤みがかって来ている。




「此処は俺が沈んだ時によく来る場所だよ」



沖田は吹き渡る風を感じながら、空を見上げた。



彼は労咳と診断されてから普通は沈むのに、沈むことなんてなかった。



それはもしかしたら、ただの強がりだったのかもしれない。



沖田の気持ちを考えると、沈んでいられないと美桜里は感じた。



「沖田」



美桜里が名を呼ぶと、沖田はこちらに視線を向けた。



「ん?」



「ありがとう」



美桜里は花が咲いたような可愛らしい笑みを沖田に向けた。





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