咲き舞う華は刻に散る


土方は彼女の白い頬に触れ、顔を寄せた。



「土方…?」



彼女の少し不安そうな声も今は何故か、愛くるしい。



「美桜里、俺は――」



土方はそのまま彼女に口付けようとした。



――が。



「土方さん!」



兵士が慌てたように向こうから走って来た。



土方は咄嗟に美桜里の頬から手を離した。



「ど、どうした?」



「今、伝令が来て…。松前口が突破されたそうです!」



「何だと!?」



土方は兵士から話を聞きつつ、彼女の姿が見られないように背中で隠した。



美桜里も彼の後ろに隠れ、動かない。



「分かった。お前は他の兵士にそれを伝えておけ」



「はい!」



兵士が立ち去ると、土方は美桜里の方を振り返った。







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