描かれた夏風

助けの手

 絵に詳しくない智先輩から指摘されて驚いた。

 けれど私の絵だと誰かに気づいてもらえて嬉しい。

「判るよー、友絵ちゃんの絵のファンだからね。第一、右下に小さく描かれているのは僕だ……と思う。多分」

「大当たりです」

 もしかしたら私の絵を見にわざわざ講堂まで来てくれたのだろうか、とすら思えてしまう。

「なるほど、だからアスカちゃん、最近あんな風に――」

「はい?」

「いいや、何でもない。――事情は大方判ったよ。それで、友絵ちゃんはこれからどうする?」

 それが分からなくて途方に暮れていたところだ。

 智先輩は笑みを浮かべるのを止めて腕組みする。

「どうすればいいのか、私、分からないです。何かできることがあるのかすらも……」

 お昼過ぎには舞台上で代表の正式発表があると聞いた。

 そのときに私の絵はアスカ先輩のものとして大勢に広められる。

 それだけは嫌だった。

「私なんかの絵がアスカ先輩のものとして発表されたら……アスカ先輩の名が汚れます。私、それだけは許せない」

「……それ、本気で言ってる?」
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