描かれた夏風

結論

「野間野先輩の絵、やっぱりすごかったね。言葉も出ないくらいに感動した! 話してみると大人っぽいし、文化祭過ぎてからなんか表情が穏やかでますます素敵になったよね。野間野アスカ最高ーっ!」

「あはは、真由は本当にアスカ先輩のファンだねえ」

 文化祭の後、真由はアスカ先輩と仲良くなっていた。

 真由はアスカ先輩に憧れてこの学校に来たというから、並み大抵のファンではない。

 同居しているという噂を聞きつけ、アスカ先輩と取り持ってもらうために智先輩へと接近したらしい。

 私もアスカ先輩に用があるときは必ず同伴させるよう、真由から頼まれた。

 ことあるごとに私と真由の二人でアスカ先輩の教室をたずねている。

 真由は見かけによらず積極的な子だ。

 アスカ先輩は私にも真由にもちゃんと平等に笑顔を向けてくれる。

 表情が円くなった。前よりもずっと今のアスカ先輩の方がいい。

「――でも、何でだろうね」

 ここ数日、我らが芸術科の話題は『そのこと』で持ちきりだった。


「まさかアスカ先輩が芸術展の学校代表を辞退するとはね……」
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