描かれた夏風

春の優秀賞

 私はついムキになって否定した。

 でも贔屓だと噂されていることは正真正銘の事実だ。

「本当に、何で私なんかが選ばれたのか、私が一番知りたいですよ……!」

 優秀賞の受賞によって、秋に開かれる芸術展の最有力候補に躍り出たのだ。

 一年生の中でも、飛び抜けて技術力があるわけではない。

 受賞したのだって、とりたてて特筆するようなところのない地味な作品だった。

 極めて平凡な生徒である自分が選ばれて、一番驚いたのが他ならぬ私自身だ。

 そして受賞したその日から、私の高校生活は暗黒に染まった。

 クラスメートや上級生からの、容赦ない視線と陰口。

 仲良かったはずの友達が、みんな私に背を向ける。

 ――たいしたことないくせに、何であんたなんかが選ばれるの?

 そんなこと、言われなくてもわかってるのに。

「私より上手い人なら上級生にたくさんいます。相応しい人、たくさんいるのに。何で私なんですか? 全然わかりません」

 いい気になれるわけもない。

 わけもわからずに注目されて、被害を被っているのはこっちだ。
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