描かれた夏風
「ほんの一瞬だけど甘くてね。幼なじみとよく花を集めたのを思い出して、懐かしくなるんだよー」
智先輩はあどけない笑みを浮かべて嬉しそうに言った。
全く、幼いのか大人びているのかよくわからない人だ。
(それにしても、どうしてあんなところに一人でいたんだろう?)
疑問は尽きないけれど、逐一聞いていたら昼休みなんてあっと言う間に終わってしまう。
「ところで、友絵ちゃんのことを芸術科の友達から聞いたよ。すごいんだってね、一年生にして春の優秀賞を取るという快挙を成し遂げたって」
智先輩が気まぐれに話題を転換した。
私は座ったままで自分の膝に視線を落とす。
「すごくないですよ。先輩もそのご友人から聞いたんじゃないですか? 先生の贔屓だ、って」
『西口 友絵』に関するその噂は、私に取ってあまり触れてほしくない話題だ。
芸術科では季節の節目ごとに優秀な作品の表彰がある。
私は入学して早々、三年生を差し置いてその受賞者に選ばれたのだった。
「ふーん。友絵ちゃんが受賞したのは、先生の贔屓なんだ?」
「ちがっ、違います……。贔屓される理由なんてないです」
智先輩はあどけない笑みを浮かべて嬉しそうに言った。
全く、幼いのか大人びているのかよくわからない人だ。
(それにしても、どうしてあんなところに一人でいたんだろう?)
疑問は尽きないけれど、逐一聞いていたら昼休みなんてあっと言う間に終わってしまう。
「ところで、友絵ちゃんのことを芸術科の友達から聞いたよ。すごいんだってね、一年生にして春の優秀賞を取るという快挙を成し遂げたって」
智先輩が気まぐれに話題を転換した。
私は座ったままで自分の膝に視線を落とす。
「すごくないですよ。先輩もそのご友人から聞いたんじゃないですか? 先生の贔屓だ、って」
『西口 友絵』に関するその噂は、私に取ってあまり触れてほしくない話題だ。
芸術科では季節の節目ごとに優秀な作品の表彰がある。
私は入学して早々、三年生を差し置いてその受賞者に選ばれたのだった。
「ふーん。友絵ちゃんが受賞したのは、先生の贔屓なんだ?」
「ちがっ、違います……。贔屓される理由なんてないです」