描かれた夏風

小さな煌めき

 アスカ先輩だったら、賞を取っても誰も文句なんて言わない。みんな祝福してくれるはずだ。

 歳なんて関係ない、アスカ先輩は素敵な人だから。

 私をみんなが祝福してくれないのは、ある意味で当たり前だ。

 そもそも、私自身が私を祝福していないのだから。

「私、成長します。賞を取っても誰からも祝福されるくらい、立派な絵を描けるように」

 私は精一杯の明るい声で誓った。

 このつらさを乗り越えれば、アスカ先輩とまではいかなくても、きっと今より強くなれる。

「応援してる。頑張って」

 智先輩は、それだけ言って静かにうなずいてくれた。

 一つしか歳が変わらないはずの智先輩が、今はとても大人に思える。

 私は何気なく上を見上げた。

 水彩画のように薄いグラデーションの青空。

 クレヨンの白色で引いた線みたいな、子どもっぽいヒコーキ雲。

 お昼下がりの静かな時が、ゆっくりと流れていく。

「……本当はね」

 私が泣き止むのを待って、智先輩は静かに切り出した。

「本当は僕、前に先生に友絵ちゃんの絵を見せてもらったことがあるんだよ」

「先輩がですか?」
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