描かれた夏風
 嬉しいような照れくさいような、複雑な気分だった。

「そう、優秀賞を取った絵」

「それは……」

 どうだったか、感想を聞くのが怖い気がした。

 私の揺れる気持ちを知ってか知らずか、智先輩はゆっくりと話し始める。

「賞の候補だっていう作品がいくつか並んでた。僕は絵のことなんて知らないし、技術力なんてわからない。どの作品もただ漠然と、上手いなーって思っただけだったよ」

 智先輩が何を言おうとしているのか、私にはよくつかめない。

「でもその中で一つだけ、理由はわからないけれど目が自然に吸い寄せられる絵があった。――その絵を描いたのが、西口 友絵さんだよ」

 私はハッとして口をつぐんだ。智先輩は以前から私の名を知っていたらしい。

「だから僕は君のあの絵が春の優秀賞をとったときも、やっぱりと思ったよ。穏やかな雰囲気が大好きだった。どんな子なんだろうと思ってたよ。実際会って話せて嬉しかった。やっぱり絵には人柄が出るんだねー」

 私は嬉しくてまた泣きそうになってしまった。

 寝返りを打ったルカが、私の膝にもたれかかってくる。

 温かさの塊に、励まされているような気がした。
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